麹のちから!100年、麴屋3代

山元正博(農学博士)著

●食べ物が美味しくなる
(食べ残しの刺身を塩麹にひと晩漬ける→翌朝、ホカホカご飯にのせてお湯を注いで食べる→最高のお茶漬け。杜氏さん直伝。
ただしニセモノの塩麹にご注意。酵素の力がほとんどなくなった塩麹、これがニセモノ。ホンモノの塩麹をとりましょう)
●身体をきれいにする
(たとえば塩麹で歯を磨く。酵素が歯についた有機物をとってくれる。歯周病の予防にもなる)
●ストレスをとる
(万病のもと「ストレス」。その解消にも麹はひと役買っています)
●環境を浄化する
(排水浄化から悪臭の除去まで、麹のちからはすごい!)

–麴には「身体が持つ本来の機能をみがく」働きがあります。

–麴は愛の微生物です!

 

2012年7月25日発行
ISBN978-4-938939-69-4
46判並製216ページ
定価(本体1429円+税)

【本書の内容】

●秘められた麴のちから
(1章)麴は奇跡の調味料です
(2章)ホンモノの塩麴を味わう
(3章)麴で健康になる
(4章)麴屋3代、100年の知恵
(5章)環境を浄化する
(6章)ストレスをとる

●麴–無限の可能性

 

麴のちからって?

①食べ物が美味しくなる
●お漬物。大根、白菜、キャベツ、きゅうりなどをよく洗い、目分量で10分に1ほどの塩麴を入れて揉む→ジッパーつきの袋などでなるべく真空状態に→冷蔵庫でひと晩寝かせる→あっという間に美味しいお漬物ができる。塩麴を入れると、麴菌にある乳酸菌の成長を促す酵素が働いて、それが乳酸菌を増殖させるからうま味が出るのです●その塩麴に、ちょっとヨーグルトを入れてみる→乳酸菌が大量に増えて、お漬物に、さらにうま味が出る●お米に塩麴を入れて炊く→メチャメチャご飯がうまくなる→米粒の照りがちがう→塩おにぎりの味●刺身を美味しく食べる→塩麴を塗るだけ。ものの5分でうま味がバーッと溶け出す。使用前と使用後の違いを感じてみる●食べ残しの刺身。塩麴に漬け込んで冷蔵庫にひと晩→翌朝ホカホカご飯の上にのせてお湯をかけて食う→最高のお茶漬け。杜氏さんの食べ方●たとえばポークソティ用のお肉。塩麹に漬けてひと晩冷蔵庫で寝かせる。これはうまい。調味料も何もいらない。ケモノ臭さが消える●豆腐を塩麴の中に漬ける→豆腐の水分が外に出て塩麴の酵素が豆腐の中に→酵素が豆腐のタンパク質を分解してアミノ酸を出す→豆腐がきゅっと締まり、最後は高野豆腐状に変わる→酒のつまみ●たまごの黄身を塩麴に漬ける→半熟状に。まったりとした黄身、うっすら塩味。これは逸品。
—-ざっとこんな具合です。でも、これはもうご存じかもしれませんね。
では次は?

②ホンモノの塩麴を味わう
ブームのあおりで、酵素のない、いい加減な塩麴が出回っています。麴が本来持っている酵素の力がほとんどなくなっている塩麴、それがニセモノです●早期熟成の甘い塩麴はダメ。タンパク分解酵素が壊れているから。常温で時間をかけて発酵させた塩麴がベスト。酵素の力が強いから●舐めてみて甘い塩麴はダメ。信頼できるメーカーのものを使う●自分でつくる。水を加える以前の塩麴を購入して、自分で水を加えて、発酵させる。これがいちばん。

③麴で健康になる
●歯ブラシに塩麴をちょっと塗って歯を磨く。歯についた有機物を塩麴の酵素が分解してくれます。抗酸化作用で歯周病の予防にもなる。ただし磨いた後は、ちゃんとすすぐ●更年期障害。更年期(「チェンジ・オブ・ライフ」)とは、人生の変わり目に現われる心身の不具合、ですね。女性ホルモンがある時期ガクンと減ることで出てくるストレスのせいで、おかしくなるのです。麴に含まれるある物質(ブトキシブチルアルコール)がストレスホルモンの分泌を抑えてくれるのです。そこで「ニンニク麴」をつくって、悩んでいた女房に飲ませたら、更年期障害がケロッと消えました。頭痛も。「ニンニク麴」は、麴を最高のレベルにまで高めた最強のサプリメントです●焼酎杜氏はがんにならない→もろみ(焼酎原液)を毎日ぺロリと舐めているから→それにヒントを得て「前立腺の友」というドリンク剤をつくった。インフルエンザに負けなくなった、前立腺がんが消えた、咽頭ポリープが消えた–というような例証が出てきました●本格派のマッコリ。あちこちでマッコリが販売されています。著者も何度かそれらを飲んでみました。しかし一度もうまいと思ったことはありません。マッコリとは本来、米や小麦を使って麴をつくり、それに酵母と乳酸菌を加えてアルコール発酵をさせたもの。「麴、酵母、乳酸菌が渾然一体となっている韓国風どぶろく」です。市販のマッコリに驚いて、こんなもんじゃないだろうと著者が造ったのが「源一郎さんのマッコリ」。大事なことは、酵母が生きているので味はどんどん変わっていくこと。できたてのマッコリはアルコール分2%程度の甘みの強い飲み物。日を置くに従ってだんだん酵母によるアルコール発酵が進み、甘味が減り、1〜2週間でアルコール分8%程度の酸味の強いお酒に変わっていく。発酵の過程で異なる味わいを楽しむ–それがマッコリを飲む醍醐味。便秘になりにくく、朝のお通じが良くなる。肌がツヤツヤする。これで花粉症も撃退しました●麴には、酸化を防いで老化を抑える「還元作用」●免疫抵抗力の強化●消化促進●腸内菌を健康にする●メタボ改善効果●デトックス(解毒)作用があります。

④環境を浄化する。
●レストランの排油を分解する●浄化槽の悪臭を消す●排水浄化●養豚場の悪臭を消す●健康な家畜を育てる●「完熟堆肥」をつくる●食品リサイクル、理想的な「リサイクル・ループ」をつくる●家畜の屎尿と化学物質で汚染された大地を、麴菌が見事に浄化してくれました。

⑤ストレスをとる
●ストレスは万病のもと。ある動物実験で、「麴菌が脳の下垂体に作用してストレスホルモンの分泌を抑制する」という事実を発見しました。その正体は、麴菌の出すブトキシブチルアルコール(BBA)でした●ストレスがかかると動物は必要以上に食べる。「ストレス太り」は人間も同じ。BBAによるストレス抑制効果。これは人間にも適用できるのではないか●するとこれまでの研究成果が点と点を結ぶようにつながった。妻の更年期障害が麴ニンニクで消えたこと、杜氏さんたちがもろみ(焼酎原液)を舐めていることでがん患者がいないこと、叔父の食道がんやKさんの前立腺がんが「前立腺の友」で抑制効果が見られたこと、韓国食品研究所がマッコリには「ファルネソール」という抗腫瘍性物質が大量に含まれていると発表したこと—これらがストレス抑制にひと役買ったことは間違いありません。麴の持つ大きな力は、ストレス抑制効果ではないか――これが著者のたどり着いた地点。いまさらなる研究を進めています。

【編集者のメモ】

山元正博さん、通称ゲンさん。薩摩隼人が背広を着て歩いているような快男子。東大出、自顕流–文武両道の猛者は、ひところはずいぶん鳴らしたようです。祖父は“麴の神様”、父が”焼酎の神様“。ゲンさんは種麴屋の3代目。頭のてっぺんからつま先まで麴まみれで育った“麴っ子”。発酵学を極めようと進んだ東大農学部では「麴は終わった学問だよ」とガツンと頭をたたかれ、内心憤然と。実際、研究室での研究は終わっていました。しかし麴への思いは消えず、モヤモヤが残ったまま帰省して家業を継ぎます。麴屋の仕事は肉体労働の連続です。折からの焼酎ブームで九州中、日本中を東奔西走します。ところがある事件をきっかけに父親と決別する羽目になりました。ここまでが第1ステージ。
苦難はそれからです。独力で億単位の資金を調達し、焼酎観光工場、ビール工場をつくり、年間40万人のお客が来るまでに事業は成功します。観光工場が閑散として絶望していた時代が夢のようです。この時代、頭が真っ白になりました。ほっとひと息ついたある日、ゲンさんは自問自答します。「お前のやりたいことは観光工場か?」「いや、違う。オレがやりたいのは麴だ、麴の研究だ」。わが道が見えたのです。
第3ステージ。
ゲンさんは、麴(麴菌)の研究に特化しました。麴の力は食べ物をうまくするだけではない。人間の身体にいい、もっと秘められた力があるはずだ。こうして「NK細胞」を増強する麴菌ドリンク「前立腺の友」を試作し、本格派マッコリをつくり、花粉症の撃退、男性の女性化の防止、「更年期障害」を退治する、農薬のデトックス(解毒)にいいなどなど、麴の持つ力を人間の健康面に向けて押し広げていきます。
そればかりではありません。「農」や「食」にも舵を向けたのです。
●養豚業の悪臭を退治するにはどうしたらいいか。
●食品リサイクルをうまく機能させるにはどうしたらいいか。
●完熟堆肥をつくるにはどうするか。
●健康な家畜を育てるにはどうするか。
●理想的な「リサイクル・ループ」ができないか。
●家畜の屎尿や化学肥料で汚染されっぱなしの土壌をどう浄化するか。
●浄化槽の悪臭は?
●グリストラップの浄化は?
●排水浄化は?
これら「農」や「食」のケースではどれもこれも、麴(麴菌)の力でうまくいきました。見事に、きれいさっぱり解決できました。麴が、人間の健康はもとより農業や畜産世界、環境浄化などに役立つことを実証したのです。
なかでもある動物実験で、「麴菌が脳の下垂体に作用してストレスホルモンの分泌を抑制する」という事実を発見したことは驚きでした。その正体は、麴菌の出すブトキシブチルアルコールでした。ストレスがかかると動物は必要以上に食べる。「ストレス太り」は人間も同じ。ストレスホルモンの分泌抑制、これは人間にも適用できるのではないか。これが麴菌の最大の力ではないか—それがゲンさんの研究テーマです。

麴が食べ物をうまくすることは紛れもない事実です。
塩麴ブームは嬉しいのですが、一過性にするにはもったいない。
それだけじゃありません。麴にはもっと秘められた力がある。
それをちょっと覗いてほしい—それがゲンさんの願いです。

いつでもどこでも、麴のある暮らし。
それを心がけてくださいというわけです。