沈むアメリカ・浮上する日本
「円高・株高・景気回復」のミレニアムへ!
増田俊男

沈むアメリカ 浮上する日本

発行年月日:1999/12/15
サイズ:四六版上製
ページ数:240
コード: ISBN4-938939-18-8
定価:(本体1,500円+税)

異色の金融アナリストが書き下ろした日本・アメリカの近未来論。ひとり大繁栄を謳歌しているアメリカが、内部矛盾をぎりぎりまで増大させて先がみえたと喝破する!

目次

 [第1章] アメリカの戦争は経済政策だ
      (景気対策のために人殺しもいとわない謀略の大国)
 [第2章] 「支配の意志」が世界を動かす
      (自由なマネー経済の時代から力が支配する時代へ)
 [第3章] アメリカを戦争に追い込んだ日本
      (日本の無為無策が世界経済再生のチャンスを潰した)
 [第4章] 日本はマネー経済で大復活する
      (円高高金利で日本は新たな繁栄の時代を迎える)

アメリカのやり方がおかしいな、と感じる方はぜひこの書を一読することをお薦めします。
 ・この戦争がアメリカにとって予定の方針だったこと
 ・なぜ必然だったか、そのわけ
 ・「新型戦争」によって、世界の支配構造がどう変わるか
 ・日本はどうすべきだったのか
 ・この戦争によって今後の世界経済はどう動くか
 などの全体図が透けて見えてきます。

かいつまんで言うと、クリントン前大統領がマネー政策で世界中のマネーを一手にかき集め未曾有の繁栄を築いた。ところが時代は変わった。マネー政策はにっちもさっちもいかず終わりを告げ、実体経済のアメリカの支配は、振興に舵を切り替えなければならなかったーー、実体経済を振興させる究極の処方が戦争だ。戦争を始めるためにブッシュを大統領に選び、かねての狙い通り戦争を演出したというのです。

[新聞やテレビでは決して知ることのできない”目からウロコが落ちる”ような解説です。

著者の増田さんはかつて湾岸戦争を言い当てたり、円高を予告したり、世界の動き、とくに金融のそれを軸に読み解く著者です。常識を越えた国際通の見方をご一読下さい。

第5章 2005年、アメリカは破綻する

アメリカを待ち受ける最悪のシナリオ—戦争か大暴落か
このようにアメリカは、2005年に向けて経済の舵取りに苦しむことになる。2005年を待たずにアメリカが破綻を来す最悪のシナリオも考えられるので、ここでそれを指摘しておきたい。

いま1999年12月未の段階でこの原稿を書いているが(したがって、この本が出版されるまでの問の情勢変化については、やや説明を欠くことになるが、これについてはご寛恕願いたい。私の発行する「時事直言」をご参照いただきたい)、私は近いうちにふたたびアメリカがイラクに対して戦争を仕掛けることになるだろうと見ている。

事態はいつの段階で戦争が起きても不思議ではない。アメリカは必ず近いうちに戦争を仕掛けることになる。たとえば、またイラクに強制核査察を要求するなど、挑発することになるだろう。

アメリカが戦争をしなければならない理由は二つある。まず一つは、経済上の理由である。99年、アメリカは6月、8月、11月と、0.25パーセントずつ3回、利上げをした。98年の9月から暮れにかけて合計0.75パーセントの利下げをしていたから、これで98年9月以前の水準に戻ったことになる。

98年9月からの利下げは、その頃、9000ドルを突破していたニューヨークダウが急激に下がって、資金が日本に流出し始めたために行われた。98年9月末からドル資産を売って日本の資産を買う流れが急増し、私が年初予想していたとおり1ドル111円になった。この円高は、アメリカから急激に日本にお金が流れたことによるものだった。ニューヨークダウは9000ドルを超えていたのが、日本への資金還流で、7700ドルまで下がることになった。そのままいくと、パニック状態になって暴落のおそれがあるということで、FRB議長のグリーンスパンは、三度にわたって利下げを行ったのである。

この利下げで、ニューヨークダウは値を9000ドルに戻すことができた。その利下げ分を99年の三回の利上げで元に戻したのである。しかし、利上げにもかかわらずアメリカの経済は加熱気味で、円高基調は続いているが、対日輸出は伸びていない。さらに、アメリカの雇用も緊迫してきているし、消費者物価、卸売物価も上げ気味で、インフレ傾向が出てきている。

インフレは利上げで抑制するのが常道だが、アメリカは、99年に三回も利上げしてしまっているから、2000年の1月いっぱい利上げできなかった。利上げできない状態でインフレ傾向が顕著になってくると、ここでまたニューヨークダウの暴落のおそれが出てくる。グリーンスパンは再任が決まるや、チャンスをとらえて利上げに踏み切った。

日本の株価も98年の10月から、一直線で上昇してきている。日本の株価も円も上がるなかで、アメリカは三回も利上げしたにもかかわらずインフレ傾向が続くとなると、もうアメリカのインフレは利上げだけでは止められないと市場が判断してしまう。さらに円高ドル安は、日本や東南アジアからの輸入製品の価格を押し上げることになる。これは、ア
メリカにとって大きなインフレ要因として働く。また、日本はどちらかというとデフレ気味の状態でありながら、株価がどんどん上がっていっている。アメリカの投資家から見ると、アメリカの資産を売って、日本の資産に乗り換える絶好のチャンスである。

ちょうど98年の10月に起きたようなアメリカから日本への急激な資金シフトが起きるおそれが出てくる。これは、ニューヨーク市場の暴落につながる。これまで、99年に暴落が起きなかったのは、インフレがコントロールされていたからである。しかし、最近になってインフレの懸念がますます強くなってきた。ニューヨーク株暴落の懸念が現実のものとなってきたのである。

利上げを三回やってもインフレが止められない。すなわち、金融政策では暴落が止められないということである。となると、政治で止めるしか方法がない。しかし反自由貿易的手段にも限界がきている。他に残された政治手段は戦争しかない。

これと同じことは98年にもあった。

「クリスマス前にアメリカは戦争をする」との私の予言どおり、アメリカは突然イラクを攻撃した。今回もすでに戦争準備は完了している。アメリカの上院で、イラク政府に反抗するクルドゲリラ組織に対して資金援助をする法案が99年の夏に通ったのである。

現イラク政権に反抗するゲリラ組織に武器弾薬、資金を与え、軍事訓練をさせる予算がついた。普通、ゲリラを支援して訓練するなどということは、秘密裏に行われるものである。上院でそういう法案を可決したということは世界中に公表されるから、これはイラクに対する明らかなアメリカの挑発である。さらに12月に入ってアメリカは国連安保理に対イラク強制核査察を要求した。もちろん、イラクは反対である。アメリカはイラクに、クルド族に対して戦争を仕掛ける口実を与えたのである。ということは、アメリカはいつでも戦争をする態勢を整えたということである。イラクがクルド族に対して攻撃を仕掛ければ、アメリカは当然それに制裁を加え、戦争になるだろう。イラクは核査察反対だから、これまたアメリカはいつでも開戦できる。

もう一つ、アメリカには戦争を起こさなければならない大きな理由がある。アメリカの大統領選挙は、2000年の11月に行われる。いま、アメリカにとって必要なことは、共和党が地盤としている兵器産業を中心とした実体経済をこれから伸ばすことである。アメリカは、景気をよくするために、貿易赤字、対外債務という負の遺産をつくってしまった。これを解消するには、実体経済を伸ばして、その利益でもって金利を払うか、あるいは返済しなければならない。
マネー経済は拡大しても、先に日本とアメリカのバランスシートについて述べたように、借金は返すことができない。経済が拡大しただけでなんの価値も生んでいないからである。

アメリカは、次々と借金を繰り返す自転車操業を続けてきた。新しいお金を入れては古い借金を払い、新しいお金を入れては先の借金を返し、という繰り返しである。しかし、これが止まってしまった。新しいお金が入ってこなくなったばかりか、資本は逆に日本に流出しているのである。そうなったら、やはり地道に働いて富を生み、借金を返すしか方法がない。すなわち、実体経済を伸ばす以外に、溜まりに溜まった借金を返す方法はないのである。

したがって、次の政権は実体経済を伸ばす政権、すなわち共和党政権でなければならない。

しかし、民主党のクリントン政権は、不況のアメリカを好況にした実績がある。このままでは、共和党の大統領候補が当選することは難しい。

これをひつくり返すためには、ニューヨーク市場を大暴落させる以外に方法がない。大暴落させて、クリントンの民主党政権に引導を渡す以外に共和党の勝ち目はないのである。共和党は、この大暴落によって、「クリントン政権のような膨大な貿易赤字の上に築かれたバブル産業の時代は終わった。アメリカの原点に戻って、農業中心、製造業中心の国づくリをしていこう」と訴えることができるのである。

この訴えは、アメリカ国民の合意を得ることができるだろう。そのためには、ここでどうしても大暴
落を起こさなければならない。これに対してクリントン民主党政権に唯一、大暴落を止めるために残された方法が、大統領の命令一つでできる戦争なのである。

民主党と共和党の政権争いで、大暴落か、戦争かが決まるのである。場合によっては、両方とも起きるかもしれない。

2000年は、とんでもない年になる可能性がある。とんでもないが、日本人にとっては100年に
一度の儲けのチャンスでもある。

著者略歴

増田俊男(ますだ・としお)

時事評論家、国際金融スペシャリスト。
慶應義塾大学商学部卒業後東急エージェンシー入社。
74年アメリカンドリームを求め渡米、七年間ビジネスを兼ね全米行脚、体当たりでアメリカを知り尽くす。
86年からハワイに渡り、先住ハワイアンの復権運動を支援、法廷闘争による広大な土地奪還闘争の成功は、 93年クリントン大統領の対ハワイアン謝罪声明へ導いた。
94年パラオ共和国がアメリカから独立するや、同国会アドバイザーに任命され、同国のオフショア銀行法制定に貢献、同国籍サンラ国際信託銀行会長に就任。
バハマ籍金融持株会社UBA Holding Corp.会長。

年間185回の最多講演記録保持者でもある。