社長になれなかった男
松村直幹

社長になれなかった男

実話に基づく企業ドラマ
荒ぶる武士道サラリーマンの戦い!
ビジネスマンの危機管理

著者: 松村 直幹
発行年月日:12月上旬発売
コード: ISBN978-4-938939-58-8
四六判並製 312ページ

定価:(本体1,500円+税)風雲舎

本書の内容

荒ぶる武士道サラリーマンの戦い!

名門食品会社専務・松川は、突如起きた重大事件の対処に苦しんでいた。
新聞の一方的なすっぱ抜き記事、特殊団体、右翼がからみ、会社は危機に瀕した。
シェアが落ちる。得意先からの批判の声。社内の白い目。
さらに企業合併、再生をめぐる社長との確執……。
なにより、最大の敵は内部にいた!

ビジネスマンはどう危機管理に対処するか!

組織、調査方法、新商品開発プロセス、顧客に対するプレゼンテーション――。
とりわけ上司とどう付き合うか――。
危機に満ちたビジネスマン道の要諦。

のぞき見

●品川駅を通過した七時半頃、マナーモードの携帯がブルブル震えた。震動音が不吉な、悪魔からの伝言のように感じられた。一体誰からだろうと思いつつ、恐る恐る携帯を耳に当てた。
「もしもし。専務ですか、岡谷です」
うわずった声が耳に響く。いつもの冷静さが感じられない。直属の部下である営業企画部長の岡谷孝司からである。
「どうしたんだ」
「例の記事が出たのです。ご存じないのですか」
「本当か! 日経には何も出ていなかったぞ」
「経済産業新聞です。社会面のトップです。ひどい内容で……」
「わかった。いま電車内だから話せない。八時前には着く。準備を頼む」

●「専務、うちの株が寄り付きから大暴落です」
松川はチラッと腕時計を見た。十時になろうとしていた。
「で、いくらになった」
「昨日の百八十円がストップ安の百三十円です。売りものが殺到して、明日からもどうなるかわからないと言っております」
「わかった。放っておけ!」
強がってみたものの、予想以上に厳しい現実に松川は、これはまだ序の口だ、これからもっと厳しい場面が続いて起きるだろうなと身を固くした。

●「松川専務はいるかね」
一柳は待ち構えていたように、録音機のスイッチを入れた。少しでも電話を長引かせることが大事だ。
「すみません。席をはずしておりますがどちらさまでしょうか。松川からどうしても話を承りたいと言われておりますので、お名前とご連絡先もお願いいたします」
「俺は関谷という。連絡先は〇六│×二二│三六××だ」
「ところでご用件は」
「お前の会社がひどいことをしているので、新聞に書かれるぞ。今なら、反省して謝れば済むが大変なことになるぞ。よく専務さんに伝えておくんだな」

目次より

第1章――事件勃発
第2章――背景
第3章――地獄
第4章――解決への道
第5章――意外な結末
第6章――買収劇
第7章――解任

新米編集者より

私も社会に出た頃、上司から「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)を口酸っぱく言われたものでした。このドラマも「ホウレンソウ」不足が事件の発端になったと思います。改めて「ホウレンソウ」は基本だと感じます。いくら会社の制度見直しや新たな社員教育で体制を整えたつもりでも、いつも同じパターンで事件が起きるわけでも、関係者全員が同じ考え方なわけでもないからです。
では、いざ事件が起こったとき、どうしたらよいのか。このドラマの中でも、法務部や営業部の意見の食い違い、それをまとめる主人公・松川のセリフが「なるほど」と思います。そしてやっぱり大切なのは、あったかい「人情」だと思えました。
本書は実話に基づく企業ドラマです。会社に起こった重大事件を解決させることができるかどうか、読み進むごとに展開が気になります。登場人物の中には、自分や上司に似たタイプも出てくるかもしれません。明日は我が身で、ビジネスマンの危機管理にぜひ読んでもらいたい一冊です。
(文責・峯尾)