風雲斎のひとりごと No.12(2007/12/26)

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なおご不要の方は、お手数ですがその旨ご一報下さい。
リストからはずします。

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夫が顔を見せると、拍手して喜ぶ老人ホームの妻
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昔いた会社の先輩から手紙を頂戴しました。
手紙には、奥さんがケガで入院し、その後、老人施設入りとなり、
「僕が行くと、妻は拍手して喜んでくれる」という一文がありま
した。見知らぬ顔、慣れない施設で心細かったのでしょうか、
知った顔が現れ、わあ、うれしいと拍手する……奥方の、そして、
そうしたためた先輩の心情を憶測して、僕は涙しました。

先輩は、その昔、鳴らした男です、酒、おんな遊び、ばくちに。
かつてロマンチストの文学青年が、やくたいもない編集稼業に
身をついやし、はけ口を求めていたのでしょうか。
仕事はできた人ですが、遊びも、激しかった。

何度も遊びにお供をしたことがありましたが、とりわけ、
飲み屋の親爺や女将への口の利き方に魅せられたものです。
「おい、親爺!」とか「ねえ、女将、これはね……」とか、
いつかはぼくもあんな口上を言ってみたいと思っていました。
そうして僕らは、大人の遊び方、人生への対処の仕方を教わり、
いっぱしの大人へと成長したのです。

人はやがて母港に帰る――
遊び人もやがて大いなるもとに回帰する――

悲しい手紙を拝見して、そんな言葉が浮かびました。

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加島祥造さんと帯津良一さんのこと
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回帰するといえば、小社の近刊・『静けさに帰る』の著者、
加島祥造さん、帯津良一さんも回帰した人だなと思い当たります。

加島祥造さんは、西洋から東洋へと大きく回帰した人です。
詩人として発しながらなかなか芽が出ず、仲間がみんな高名に
なって世に出ていくのを、どんな想いで見ていたのでしょうか。
他人は他人と目をつぶり、欧米文学の翻訳者、大学教師として欧米に
どっぷり浸かり、東洋には目もくれなかったそうです。

ところが英語版で「老子」を読み、こりゃあすごいぞとのめりこみ、
十数年の時間を費やして「老子」を学びます。そこから火がつきました。
老子という大きな山塊を越えてみると、なにやらよくものが見えてきま
した。世間が、「伊那谷の老子」とか「タオイスト」と呼ぶのも故なき
ことではないようです。

帯津良一さんは回帰者というより変革者、でしょうか。
仮説を立て、そこに持ち前の力と努力で邁進する。課題に到達すると、
新たなテーマが現れ、さらにそこを超える。そうしていつも前を見て
進んできたお医者さんです。

加島さんと帯津さんのこの対話(『静けさに帰る』)を、
「名人同士の碁を観るのと同じ感動をおぼえた」
と評してくれた人がいます。長い間、名人戦などを見続けた囲碁
記者の秋山賢治さんです。小川誠子さん、大竹英雄さんらも愛読
してくれているそうです。つい最近、加島さんに日本棋院から
お声がかかり、小川さんと5子で対局したのですが、その一局を
僕も観てきました。2月ごろジェイコムで放映される予定です。

もと「週刊ポス編集長」の関根進さんは「この本のいいところは
『静けさに帰る』という題名です。とくに、最後の章の『ホーム
カミング――大きな世界帰る』が圧巻です。きっと、読んだあなた
の人生の”居場所”が見えてくるはずです」と評してくれました。
ありがたいことです。

そういうわけで、『静けさに帰る』は快調に出ています。
まだご覧でない方は、年末年始にでもぜひどうぞ。

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意識を変える
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世間は相変わらず迷走しているように見えますが、そんな中にも
一筋の明確な流れがあるように感じます。気づく人、ひらめきを
得た人、へえ、こんな人がいたの!というような新人類に出会っ
たり、何より、チャネラーとかシャーマン(天上からの声を聴き
取る人)のような人がやたらと増えたと思いませんか。

そういえば、「21世紀はシャーマニズムの時代だ」と言った人が
いましたが、その流れが、だんだん強くなってきたように感じます。
たぶんこの風潮のポイントは、「意識を変える」でしょう。暮らし
を、意識を、つまり自分を変える……。何者かが自分を変えろと、
せっついてくる――そういう時代のようです。

今年読んだ本の中でベストといえるものに
『バシャール スドウゲンキ』(VOICE)という一冊があります。
バシャールとは懐かしい名前ですが、スドウゲンキというボクサー
上がりの若者との対話がすばらしい。

バシャールは宇宙の意識体ですが、遠い、高い地点から、地球という
この星に何が起こっているのか、その未来図をチラチラ見せてくれます。
信ずる、信じない――それは自由ですが、一見の価値はあります。

そういうわけで、来年の課題は、「自分を変える」では?
僕も老体にむち打って、ちょっぴり自分を変えようと挑戦してみ
ます。一年間、ご愛読ありがとうございます。また来年もどうぞ
よろしく—。2007・12・25 風雲斎