+------------------------+
風雲斎のひとりごと No.28 (2010.9.6)
+------------------------+

このメールマガジンは、これまで風雲舎とご縁のあった方々に
発信しております。よろしければご一瞥下さい。
ご不要の方はお手数ですが、その旨ご一報下さい。
送信リストからはずします。

―――――――――――――――――――――――――
「あんたがつくった本の中で、一番面白かった……!」
―――――――――――――――――――――――――
そうお褒めいただいたのが、『ヘコむな、この10年が面白い!』
という本。これからの日本は、「モノづくり」から「コト興し」へ
舵を切り替えなければやっていけない――と説いた一冊です。
(小社7月末刊・元ソニーチャイナ会長・小寺圭著)

褒めてくれたのは、風雲齋の師匠に当たるある大学の先生。先生
はそれこそ世界中を歩き回り、これまで足を踏み入れない国は
ないというほど地球事情に明るい農学博士です。
その先生が、
「へえ、そうだったの! 事情はそんな風に変わっていたの!」
と、モノづくり世界の変化を「この一冊でよく分かった。あんた
がつくった本の中で、一番面白かった」と褒めてくれたのです。

(手前味噌をちょっと続けますが)お褒めの言葉は他の方々からも
頂戴しました。ある仲良しの財界人は「なるほどね、そうしないと、
もう日本はやっていけないかもね……。この本は、風雲舎の本の中
では白眉だね。面白くて役に立つ本だった。25冊買って周りの人
に配った。だからしっかり売りなさい」と。
編集者というのは妙なもので、本を出して、反応がなければないで、
「うーん、ダメだった」かなどと悩み、こうして褒められれば、
「やはりいい本だったろう」と、そこで得心したりするのです。

――――――
ネットの力
――――――
今回びっくりしたのがネットのパワーです。
通常、本を出版すると、朝日新聞や読売、日経などの全国紙に広告
を出します。同時にパブリシティー活動に走り回ります。書評とし
て取り上げてもらうためです。上記の本は全国紙・地方紙、それに
日刊紙、雑誌などを合わせ、合計10紙(誌)ほどに取り上げても
らいました。
ありがたいことです。

ところが店頭の反応があまり良くありません。
実売として数字に上がってこないのです。
街は灼熱の暑さ。みんなあえいでいます。
これでは、本を買いに行く気にもなれないな……。
――はて困りました。

思いついたのが、ネットです。
配信数の多い有力なネットに広告を出してもらおう――。
お願いしたのは「田中宇の国際ニュース解説」。
20万人に配信しているという著名なネットです。
「おじさんの頼みじゃしょうがないですね」と、旧知の田中さんは
快諾してくれました。割引料金で。

さてここからです。
通常わが社のホームページには1000人(月に)くらいしか訪問客が
ありません。ところがこの広告を境にぐんと来客数が増えたのです。
田中さんのネットが引き金となり、次々に他のネットにも取り上げ
られました。訪問客は5000人、6000人となり、8月末には8000
人超となりました。わずか2週間ほどの間にです。
これがネットの力、というのでしょうか。

むろん訪問客ですから、注文数とは異なります。
推定して概算すると、注文実数はその3%でしょうか。
図らずもネットパワーの威力を見せつけられました。
以来、アマゾンはじめネットの動きを凝視するのが日課となりました。
活字媒体の広告が激減しているという事情も、何となく分かりますね。

―――――――――――――――――
あるキャリア・コンサルタントの悩み
―――――――――――――――――
キャリア・コンサルタントというある女性からのメールにこころうたれ
ました。いったん職を離れた人の再就職のために、さまざまな職業訓練
の機会を提供している行政法人に所属する方です。日経新聞に掲載され
たこの本の広告原稿
――「モノづくり」から「コト興し」時代へ――
という惹句の、とりわけ「コト興し」という一句に目が釘付けになった
というのです。そうだ、離職者が「コト興し」すればいいんだ――と。

離職者が新たに職を得るというのは、並大抵のことではありません。
事務職一名の募集に100人が殺到するそうです。この女性はそんなこん
なで悩んでいたに違いありません。やりとりの後、ある日、著者の小寺
さんと対話してもらいました。
テーマは「離職者のコト興し」。

小寺さんはゴチャゴチャ言わず、ずばり問題点に切り込みます。
「私のところにはよくベンチャー企業から、誰かいい人がいないですか
と問い合わせがあります。ベンチャーはふつう、ハローワークに求人に
行きません。やはり信頼できる人に依頼するようです。そうした動きを
見ていると、こうしたニーズはごまんとあります。もしあなたにその気
があれば、離職者とこうした現場をつなぐ方法を考えてくれませんか。
あなたが1エージェントになって両者をむすぶのです」

小寺さんはこんなことも言いました。
「先日ある歯医者さんが“往診治療”を試みたいと言って来ました。
一人暮らしの老人などにこちら側から出かけていって治療したいという
のです。診察の出前です。高額の税金を払うくらいなら、こうした方法
で社会還元したいと。その際、申し込みや予約などのコーディネートで
他人の力が必要になります。そこに“仕事”が発生します。こうした小
さなコト興しが実はいっぱいあるんですね」

「なるほど……。現場に行けば、歯の治療だけではなく、老人にとって
必要な買い物や手伝いやら“仕事”はいっぱいありそうですね。その
現場というポイントをいくつかつなげれば、そこにニーズが生まれそ
うですね。すると、コト興しができるかもしれない……」と女性。

彼女の問いは、国家規模の壮大な「コト興し」とは距離がありますが、
日常、面談している離職者の再起の道を何とかしたいという真剣な
想いがありました。何かひらめきを得たでしょうか。この先、彼女が
どんなつながりを発見するのか、いつかお尋ねしたいものです。

―――――
コト興し
―――――
既存の職業、職種の枠に空きがなく、それどころかその絶対数が減少
している――とすれば、どうしても離職者が増えます。今の社会はま
さにその典型です。

ではどうするか。
国家規模での「コト興し」――そのいい例がオバマの提唱した「グリ
ーン革命」ですが、著者は日本でも同様のことができるといいます。
いや、やらなければならないと。
国家規模の「コト興し」から離職者の「コト興し」まで、とにかく
新たなコトを興し、多くの人々をそこに結びつけて生きていく方法を
探す――。「コト興し」にはそういう意味が込められています。そう
いう構造に変えていかなければならない――と。

出版社もうかうかしておられません。
モノをつくって右から左へと流す時代ではないようです。
著者の小寺さんの後について回って講演会活動に精を出すことになり
そうです。風雲舎主催の、つまり自前の講演会も考えられます。
詳しく予定が決まりましたらまたお知らせいたします。

この本、
『ヘコむな、この10年が面白い!』(「モノづくり」から「コト興し」時代へ)
は、読者からの反響も含め、いろいろ考えさせられる一冊でした。
まだご覧でない方には、ぜひどうぞ――。
詳しくは http://www.fuun-sha.co.jp/

ありがとうございます。(今号終わり)

転送歓迎。ご意見・ご批判も歓迎(風雲齋)。

2010.9.6 風雲斎