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風雲斎のひとりごと No.77(2018.8.17)
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このメールマガジンは、これまで風雲舎とご縁のあった方々に発信して
おります。よろしければご一瞥下さい。ご不要の方は、お手数ですが
その旨ご一報下さい。送信リストから外します。

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『1日100回ありがとう』
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上記の新刊ができました。
アメリカ発の「ありがとう」の本です
(46並製 定価1500円+税 発売8月21日)

著者は川初正人(かわはつ・まさと)さん。
サンフランシスコ在住46年の、金光教の教師です。
といっても、金光教PRの本ではありません。
その教義などはむろん出てきますが、著者が取り
組んでいる「ありがとう」の道がまことにすばらし
いので、それを書いてもらったのです。

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自分の臨終のさまを見せられた川初青年
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川初さんの両親もやはり金光教の教師です。
少年時代、家に帰ると、教会の片隅に座り、一日中信者の
人々と話している父の姿があります。
「なんと陰気な生き方だろう。あんな風にはなりたくない。
いつか必ず教会からも両親からも自由になって、世界に飛び
出したい。そのためにしっかり勉強し、身体を鍛え、海上
自衛官を目指そう」
それが川初少年の希望でした。

念願の海上自衛隊に入り、世界一周航海の乗組員に抜擢され
意気が上がっていたある夜、仲間が祝ってくれました。
宴を終え、少々酔いもあって、いい気分です。ふらふら一人
艦艇に向けて帰る途中、神戸タワーの前にさしかかり、夜空を
見上げると、無数の星がキラキラ輝いています。
「なんと美しい夜空だろう……」
しばらく見とれていました。

突然、ガガーンというものすごい衝撃が襲いました。
その衝撃と共に私は一気に地中に引きずり込まれました。
何が起こったのかわけもわからず懸命にもがいていました。
とそのとき、自分の意識に、生まれてから今日までの二〇年間が
まるで映画のように鮮明に見えてきたのです。

いくつかの映像の後で映し出されたのは、自分の臨終の姿でした。
今まさに息を引き取り、魂が肉体を離れようとしています。
なんと、その胸中は後悔の念でいっぱいです。
「長い人生を終え、いま肉体を離れてみて、私はこの人生で
いったい何を学んだのだろう。どんな成果を残したのだろう。
無だ。ゼロだ。虚しい」
恐怖で震えていました。

そのときふと、教会の隅に座り、迷った人々と話をしている父の
姿が脳裏をよぎりました。「あそこに解決の糸口があるかもしれない」。
人生の目的を知らなければならない。そのための糸口なら、どこ
にでも行こう、何でもしようと直感したのです。
名誉ある遠洋航海を断り、海上自衛官を除隊することを申し出
ました。あれほど逃れたかった両親のもとに帰ることにしたの
です。

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ゴミ拾い
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根性を入れ替えて金光教学院で真面目に修行していると、アメリカ
での布教を命じられました。
ほんのちょっとのつもりが、結局、在米46年になりました。

いま著者は布教のかたわら、武道や書道、漢字を現地の人に教え、
一方で、ゴミやたばこの吸い殻を拾って歩く毎日です。ゴミを拾って
いると「何をしているの?」「市の掃除夫ですか?」と聞かれたり、
「乞食野郎」とののしられたこともあります。でも、かまわず続け
ました。賛同者も現われ、今ではサンフランシスコの掃除大臣と呼ば
れるようになりました。

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ありがとう
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15歳になる著者の息子が車上荒らしで逮捕されたときのことです。
宗教家の息子のくせに何たることか、説教の一つも言ってやろう
と駆け付けると、息子はふてくされています。
……言うべき言葉が見当たりません。
ふと口をついて出てきた言葉が「ありがとう」でした。
結局「ありがとう」の言葉以外、息子に何も言えませんでした。

お勤めしていると、こんな難儀がいっぱいやってきます。
ありがたくない状況をありがたいそれに変えるために、
どうしたらいいか。キーワードは「ありがとう」でした。
「ありがとう」を唱え始めたのです。
「ありがとう」を、一日100回。一日千回、今では一日1万回に
なりました。そういう暮らしがもう20年になります。
「ありがとう」という言葉の持つパワーに触れたのです。

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何のために生きるか
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著者を駆り立てたのは、何のために生きるか、生きる目的は何か
――という衝動でした。モノや名誉やお金ではない何か。
教会の教え、社会活動を通して、50年がかりで、著者は何か確かな
ものをつかんだようです。
この本の主題は「ありがとう」ですが、なぜ生きるのか、何のために
生きるか、実はそれがメインテーマかもしれません。

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不思議なご縁
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この本が生まれたきっかけは、ご縁でした。小社の一冊に『遺伝子ス
イッチ・オンの奇跡』という本があります。8刷りを重ねる隠れた
ベストセラーです。子宮頸がんを患った工藤房美さんという主婦が
自分のがん細胞に向かって「これまでありがとう」と祈り、自分の
体内にある遺伝子をスイッチ・オンすることでついに生還したという
ストーリーです。

日本の金光教の先生がこの本を読み、回り回ってサンフランシスコの
川初さんの手に届きました。川初さんは「この本はすごい」と絶賛。
工藤さんらを、ハワイ、サンフランシスコ、ロスでの講演に招い
てくださったのです。以来、工藤さんは川初さんとも昵懇になり、
金光教で講演する機会が増えました。

そのご縁で、『遺伝子スイッチ・オンの奇跡』のライター・木下
供美さん(工藤さんのいとこ)が、本書を執筆することになりま
した。不思議なご縁です。

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取次ということ
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ついでに、もう一つあります。
文中に、「取次」(とりつぎ)という言葉がよく出てきます。
この宗教団体で言うそれは、人の願いを神様にお伝えし、神様の
思いを人に伝えること、それが取次です。共に声をかけ合って助け
合い、事を成していくという意味、だそうです。

なるほどと感心したのは、この本の編集で協力してもらったAさん
という女性がいます。いくつか確認したいことがあったので、
Aさんは金光教のある支部教会に取材に行きました。あれこれ聞き
ながら、ついでに自分自身のこともお尋ねしたそうです。その
ご返事がまことに簡潔明瞭、まさに適切。彼女は心穏やかになった
と喜んでいました。

彼女の質問を教師がいったん受け、それを神に問い合せ、そのうえ
で「こうしたら……」とご返事をくれたそうです。その内容がドン
ピシャだった、これからもお訪ねしたいと。

悩みを打ち明け、それを神にお伝えし、そのうえでご返事をもらう。
このシステムこそ、まことに優れたそれではないかと感じました。
世間では、こういう関係がどんどん希薄になっています。誰に相談
したらいいか、人は悩んでいます。上の一事を聞いて、風雲斎は
改めて、なるほどと合点しました。

「ありがとう」といえば、小林正観さん、上にあげた工藤房美さん、
五日市剛さんなどが思い出されますが、川初正人さんというアメリカ
発の「ありがとう道」にご注目ください。
ありがとうございます。(今号終わり)