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風雲斎のひとりごと No.35 (2012.1.20)
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このメールマガジンは、これまで風雲舎とご縁のあった方々に
発信しております。よろしければご一瞥下さい。
ご不要の方はお手数ですが、その旨ご一報下さい。
送信リストからはずします。

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小林正観著『淡々と生きる』
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小林正観さんの遺稿『淡々と生きる』が出来上がりました。
1月25日に本屋さんの店頭に並びます。

次のような構成になりました。
(1章) 淡々と生きる
(2章) 運命の構造
(3章) 魂の話
(4章) 悩み苦しみをゼロにする
(5章) すべてを味方にする
(6章) 病を得てわかったこと

この本のポイントは、たぶん6章です。
2年余の病の合間に、正観さんの思考は大きく変化して
いったようです。僕が直接お話を伺ったのは11年1月から9
月までの7、8回ですが、こんな風におっしゃっていたのが
印象に残ります。

「40年間、精神世界やらいろんなことを学んだつもりだった
が、まだまだでした。自分はまだまだわかっていなかった。
病気にならなければ、大事なことを知らないまま死んでいった
でしょう……」

「いつ死んでもいい、いつでも死ねる、生きることに執着はな
い――ある程度勉強した人にとっては、そういう気持ちになれ
るものです。私もその程度のことは言っていました。そこへ
正岡子規のひと言、“悟りとは、平気で死ぬことではなく、平気
で生きることである”がやって来たのです。つべこべ言わない
で平然と生きること、淡々と生きること、それが悟りである
――それがドーンと響いてきたのです」

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肩代わりという考え方
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正観さんにとっては、天皇の言葉もショックでした。
「今年もし日本に災いが起きるならば、まず私の身体を通してか
らにしてください」という、天皇が毎年、元旦早朝に祈るひと言
です。この言葉も、正観さんにガツーンと衝撃を与えました。

正観さんはその重みをこんな風に表現しています。
「世の中にそんなふうに考えられることがあるのか。そんなふう
に考える人がいるのか。人間の魂や心が、そんな崇高な状態に
なれるのか。六十年の人生の中で、これほどショックだったことは
ありません」

天皇の言葉を病床でずっと一年間噛みしめながら、やがて正観
さんは以下のような結論に至ります。
「天皇の言葉の中には、見ず知らずの人も、その辺を通り過
ぎるまったく知らない人も含まれています。私は残念ながら
そんなふうにはなれない。そこまではいけない。でも私の友
人である目の前にいる六百人のためだったら、その一部を
肩代わりしてもいいと思った。私は、友人たちのために少し
ずつ肩代わりをすることで、私の症状が悪くなるというか死に至
るのであれば、それは一向にかまわない――そういう結論になっ
たのです」

「そう意識することで、なぜか今までとは全然違うぐらい身体
が回復しています。メキメキと気力が回復していることがわか
ります。なぜそうなるのか、そのメカニズムも実証もよくわか
らないのに、その不思議な動きに驚きながら、感謝しているの
です」
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たどり着いたところ
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この部分には考えさせられました。
何かが引っかかってくるのです。これは何だろう、これはどういう
考え方だろうと思案していると、一緒に作業をしていた編集仲間が、
こんなことを言うのです。
「それはイエス・キリストの贖罪に一脈通じる考え方だね」と。
イエス・キリストがすべての人の罪をその身に背負い、全人類に
代わって十字架にかかって死に、その罪を贖ったというあれです。
人間が生まれながらにして持っている原罪を贖った――。

天皇家はもともと神々の一族ですから、数千年前からその地平に
いたことは、(言われてみれば)なるほどそうかと納得できます。
神々の思考にそういう考えがあっても不思議ではありません。
イエス・キリストは神の子ですから、贖罪という概念が生まれる
のも不思議ではありません。
ところが一庶民である正観さんが、「肩代わりしてもいい」ところ
へ到達したのは、なんともすごい。

たぶんここが『淡々と生きる』のクライマックスです。
正観さんの想いは、自分の死を見つめながら、こんなところ
へ到達していたのです。

正観さんは自分の死をはっきり意識していました。
奥様にお目にかかってお話を伺ったところ、死の一週間前に
「子どもを育ててくれてありがとう」という電話があったそ
うです。「あの人はそれをはっきり意識していました」と。
SKPの方々も同じように、「正観さんは、それを知ってい
て、すべての段取りを終えて、ニコニコと旅立ったのです」
と言いました。
あの人はやはりすごい人だった――あらためてそれを痛感し
ます。ありがとうございます。

『淡々と生きる』詳しくは
http://www.fuun-sha.co.jp/

(今号終わり)