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   風雲斎のひとりごと No.21 (2009.12.4)
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若きジャーナリストの進化
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田中宇(たなか・さかい)という人のことは、もうずいぶん
著名になっているからあらためて紹介することもないでしょうが、
彼のこの道(国際関係)最初の本・『神々の崩壊』という一冊は、
実は風雲舎からの出版でした。
神々というのは、LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)
という陣を構え、ノーベル賞を受賞した二人の経済学者が
金融デリバティブ理論を構築し、一世風靡した金儲けの神々でした。
金融デリバティブ理論は大もてでしたが、結局は「詐欺の手口の巧妙化」、
「ゼロサム的な金融賭博でいかに儲けるか」に過ぎなかったと断じて、
田中さんはその崩壊を書きました。

なぜこんなことから書き出したかというと、当時出会った田中宇さんは
まるで学生さんのような若さと風貌で、えっ、これがほんとにあの鋭い
発言をしている人物なの! とびっくりしたことがあったからです。
ところが10年経ってみると、若者はたくましく、力強い国際ウオッチャー
に進化していました。

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田中宇という国際ウオッチャーの視点
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10年ぶりに田中さんに書いてもらったのは、
『日本が「対米従属」を脱する日』(12月8日発売)
という一冊です。

一段たくましくなった彼の分析には、モヤモヤした霧をすっきり晴らし、
事態の構造をくまなく見せてくれるようなパワーがあります。
彼の視点はとてもユニークで、そのへんの新聞やテレビの解説ではめった
にお目にかかれない優れものである、と思います。

�この本もそうです。
日本はもう「対米従属」を脱した、と著者は言います。戦後60年、日本
はへなへなして、アメリカの傘の下でぬくぬく育ってきました。ところが
そのアメリカが力を失い、庇護者としてのパワーがなくなった。親ガメが
こけたら、子ガメはどうすればいいか。著者は、「多極化」という大きな
潮の流れを見ながら、その問いに答えを見つけようとします。

�日本が対米従属を脱したのは、日本が強くなったせいではない。ユーロ
圏や、BRIC(ブラジル・ロシア・インド・中国)諸国が発言権を増して
いるのは、彼らが強くなったせいばかりではない。
ことの本質は、この世界を牛耳る米国中枢の人々が、そうなるように世界を
誘導しているせいだ。真のねらいは、従来のアメリカ一極から、あっちに
もこっちにも拠点が生まれる「多極化」構造に世界を変えようとしている
こと――これが、時代のベクトルなのだ。これを見誤るなよと分析します。

�ここが著者の視点のユニークなところです。
欧米や日本などの先進国は、すでに経済的にかなり成熟している。だから
この先、あまり成長が望めない。これまでの欧米中心の体制が続くことは、
世界全体の成長を鈍化させる。100年単位で先を考える世界の大資本家に
とって、これは不満だ。

だから、米英中心というこれまでの既得権を一旦ぶち壊してでも、中国や
インド、ブラジルなどの途上国に経済発展させなければ、さらなる発展は
望めない。米国中枢が「多極化」を推進するのは、そうした「資本の論理」
に基づくものだ、というのです。こういう戦略を「多極主義」と呼び、
これに対立する体制を、「米英イスラエル軍産複合体」、と著者は分けます。

�このふたつの体制が入れ替わるようにして、世界の主導権を牛耳ってきた
――これが著者の根っこにある視点です。これは正しいか間違っているかは、
誰にも分かりません。ただこのパースペクティブで、複雑な世界の動きを
見ると、なるほどとうなずくことが多いのです。

�たとえばこんな具合です。
なぜドルが崩壊過程に入ったのか、なぜポンドが瀕死に陥っているのか、
なぜ中国がむりやり台頭させられたのか、なぜオバマが核軍縮にあれほど必死
になっているのか、日本だけではなく、なぜ世界の多くの国が「対米従属」
から抜け出しつつあるのか、なぜG20が世界政府になりつつあるのか、何より
日本では、なぜ小沢と鳩山が「多極主義」的な発言をし、それに沿うような
行動をとるようになったのか――こうした疑問に合点がいくのです。

�田中宇という著者が、こうした世界的な動きをウオッチングし始めたのは
10年ほど前のことです。共同通信の記者時代、“座敷牢”に異動で飛ばされ、
やむなく世界各国から流れてくるナマの情報を読んでいた。これがおもしろ
かった。ナマで見る情報は、世間で流布しているものと違うことに気づいた
のです。

�さらに世界の動きをじっと見ていくと、そこに、ある意志が存在すること
に気がつきます。世界の動向に大きく関わっているパワー、それが「多極主義」
と「米英イスラエル軍産複合体」でした。前者は「資本の論理」、後者は
「帝国の論理」です。

�著者の結論はこうです。
いま世界の主要なベクトルは「多極化」だ。
覇権国アメリカは、今後のことはそれぞれがやってくれと、ボスの座を降りた
がっている。とすると、日本もいつまでも「対米従属」しているわけにいかない。
さて、どうするか。
「対米従属」慣れした頭ではなく、自分の頭で考えなければ、この先、にっちも
さっちもいかないよ、その兆しは、方々に出ているじゃないか、
しっかりしろ、というわけです。
「歴史が変わる時というのは、ファンファーレは鳴らない。
道頓堀に飛び込む者もいない。何も起きない。
しばらく経って人々は、
あれがその時だったと気づく……」と。

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もう一冊の本
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 今月は頑張ってもう一冊出版しました。
『社長になれなかった男』(松村直幹著)
という小説です。

著者はこの道では無名の人。
ある名門食品会社で専務まで務め、その経験からビジネスマンの“危機管理”
を描いた作品です。

主人公は突如起きた重大事件の対処に苦しみます。新聞のすっぱ抜き記事、
特殊団体、右翼がからみ、会社は危機に瀕します。シェアが落ちる、得意先から
の批判の声、社内の白い目、さらに企業合併、再生をめぐる社長との確執……。
なにより、最大の敵は、内部にいた! というわけで、実話に基づいた企業
ドラマです。

風雲斎も30年ほどある企業にいて宮仕えを経験しました。
仕事はちゃんとやる、でも媚びない――
このテーマの下で会社勤めをこなしてきましたが、なかなかでした。
著者は、正義感の強い、武士道に則って激務をこなしますが、最後に待って
いたのは“更迭”でした。その間のサラリーマン人生を、荒ぶる魂がどう対処し
どう運命を受け入れたか――読ませる作品になりました。

今号は2冊のご紹介です。
よろしければどうぞ――。
年の瀬で、あわただしい時が続きます。
どうぞご自愛していい年をお迎えください。

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風雲斎 2009.12.4

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