腰痛は脳の勘違いだった
痛みのループからの脱出
戸澤洋二

腰痛は脳の勘違いだった

著者: 戸澤洋二
発行年月日:5月末発売
コード: ISBN978-4-938939-47-2

定価:(本体1,500円+税)風雲舎

帯津良一医師が激賞!

……私はがん治療におけるこころの重要性を説いてきた。しかし著者のような「回路の論理」には思いつかなかった。さすが、工学畑の人だ。
「痛みのループからの脱出」という著者の論理は、がんを始めとするすべての慢性疾患に通ずる治癒の原理なのかもしれない。これは慢性疾患に悩む人の必読の本であり、すべての医療者に一度は読んでいただきたい書である……(オマージュより)

本書の内容

[まえがき] たかが腰痛、されど腰痛
[第1章] 発症
[第2章] 試行錯誤
[第3章] 激痛
[第4章] 心と痛みの関係
[第5章] 痛みの回路
[第6章] 痛みのループからの脱出
[第7章] 戦闘開始
[第8章] 完治!

もしやあなたも?

腰痛に悩んでいる人は全国で1千万人、だそうです。
椎間板ヘルニアなど、物理的、具体的な障害を伴う腰痛は、そのうち30%。
のこり70%の腰痛患者は、理由のはっきりしないまま、それが慢性化しているそうです。
ドクターショッピングを繰り返している人、
仕事にも出られない深刻な悩みを抱えた人、
時間とお金を使って入口にもたどり着けない人――、
脳の勘違いで、体のどこかが慢性痛を訴えていませんか。
痛みのループにはまりこんでいませんか。
心当たりのある方に、ご一読をお薦めします。

二刷版の加筆内容

改訂版へのあとがき
その後
条件反射痛
ペイナーズハイ
記憶された痛み
痛みへの執着からの解放
脳の勘違いの慢性疼痛患者のケース

立ち読み(本文より)

……悪魔は足早にやってきた。突然のように左臀部、左足の脛外側、膝裏、足の甲がいっせいに悲鳴を上げ始めた。以前とは比べようもないほど痛みは激しく、10メートルと歩けないのである。しゃがみ込んで2分休み、10メートル歩いてまた2分休む。痛みは四六時中ドックンドックン襲ってきて、眠れない夜をのたうち回った。

……サーノ博士によれば、
「心に精神的な苦痛があるとき、脳は体の一部の筋肉に疼痛を発生させ、その精神的な苦痛から注意をそらすようにする」という。
胃潰瘍という病気がストレスからくることは今では常識ともいえる。ストレス性胃潰瘍である。サーノ博士的にいえば、「ストレスの苦痛で心が耐えられないとき、脳は胃に痛みを発生させて胃潰瘍をつくる」ということになる。

……近年はストレスはあらゆる病気の原因といわれているから、心因性の腰痛や座骨神経痛などはあって当たり前といえば当たり前である。ところが大多数の整形外科医は物理的構造異常にとらわれていて、こちらの方向には目を向けようとしない。「心因性の腰痛」は常識ではないのである。

……「痛い」とはどういうことか考えてみた。
私は長年、電気回路設計を職業としてきたので、物の仕組みを電気回路的に考えてしまうことが多い。人間の体の神経系を伝達する神経信号は「電気信号」と同じようなものだから、体の構造も「回路」で考えてみることはそれほど難しくない。

……私の腰痛と下肢痛は何年も続いた慢性症状である。
本来人間の体は、なんらかの痛みが発生したら、コントロールタワーである脳がそれを感知し、正常に戻すための自然治癒力を発揮させるようにできている。ところが慢性症状があまりに長引いて常態化してしまったために、コントロールタワーが異常な状態を正常であると勘違いしてしまったのではないか。勘違いした脳が、常態化した異常こそ正常状態であると思いこんでしまい、それを保とうとしているのではないか――と考えた。

……痛みの回路は「環(ループ)」の形状をしている。
「痛み信号」は、脳部Aからスタートして下肢に痛みを発生させ、脳部Bに戻り、「痛い」と感じさせ、そしてさらに脳部Aへ「痛みのストレス」という形で伝達され、「環(ループ)」の回路をぐるぐる回っている。「痛み信号」はループ状の回路を循環することにより、どんどん増幅されていくから、痛みの強度は増すばかりになる。この環状の構成をした回路を、私は「痛みのル―プ」と名付けた。

……痛みのループを断ち切るには?
ポイントは、悪循環の発振現象を起こしている痛みのループである。
回路を構成するどこかの部分の機能をストップさせれば、全体動作が停止すると思われる。

……完治するまでのプロセスとは何だった?
1. 毎週一回ペインクリニックで、トリガーポイントブロック注射を圧痛点(触って痛いところ)に打つ。私の場合は、腰部硬膜外ブロック注射も同時にした。
2.麻酔が効いて痛みが消失している間は「楽しいこと」に専念する。ストレスが発生することはしない。
3.脳をリセットする訓練をする。これは「痛みを無視する訓練」と「良くなったイメージを持つ訓練」である。
4.抗不安剤の服用。これは脳をリセットする訓練を援護する強力な武器である。
5.毎日のストレッチ、週末のプールリハビリは肉体と気持ちをリラックスさせた。

(完治した著者は、今ばりばり仕事をこなし、ルンルン気分でラジコン飛行機に興じている)

書評

日刊工業新聞(2008.1.21)

「著者登場」  戸澤洋二
-電気設計の技術者が腰痛のメカニズムを分析した本としてインターネット上で人気とか。
「自分の体を電気回路に見立てて、痛みの発生の仕組みを探っただけだ。腰痛に関する本が無数に出ているが、なぜ発生したか、なぜ痛いのか、どうすれば治るのかという点に乏しい。専門用語が飛び交い、患者を向いていないこともある。“たかが腰痛”かもしれないが1000万人いるという腰痛患者からは“されど腰痛”。患者の視点で分かりやすさを重視した」

-一見、信じがたいタイトルですが…。
「ストレスを感じると身体の一部に痛みが発生するという考えは昔からあったが、腰痛と結びつけて考えられなかった。他の病気では外科診療に加え、メンタル面の治療が当然進んでいる半面、心因性の腰痛は常識とされていない。骨格構造上、問題がない患者も多いのにだ。原因が分からないまま、痛みが慢性化すると、脳が痛みがあることが正常だと認識してループ状態になる。」
「もちろん、メンタル面だけでどうにかなるものでもない。最初は痛みが発生する“センサー部”に局部麻酔をして痛みを遮断し、強制的に痛みの信号を送る脳をリセットすることが大切」

-実際、医学界からも注目されているそうですね。
「なぜだか賛同して私の本を病院で売ってくれる整形外科医が増えている。私は医師ではないから、あくまでも実体験から仮説を導き解決しただけ。ただ、欧米では腰痛を整形外科と心療内科で共同診察するのは主流の考え方。手術などほとんどしない。日本ではまだ普及していない治療法だが、広がりつつあるようだ」

-「病は気から」ですね。
「すべての原因が構造異常に収斂しないということだ。最近は多くの病気でメンタル面の診療も取り入れられている。ただ、経験上で重要なのは“自分で治す。医師はアシスタント”という認識。私も腰痛治療で理学療法、カイロプラクティック、高圧酸素治療、鍼灸、気功など約20種類の治療法を試したが、どうにも治らなかった。今思えば医師がどうにかしてくれるという甘えがあった。患者参加型医療が叫ばれているように、患者の意識の持ち方が大事だ」
(粟下直也)

著者略歴

戸澤洋二

1950年福島県生まれ。岩手大学工学部電子工学科卒業。電機機器メーカー勤務。東京都在住。フライフィッシング、天体写真撮影、ラジコン飛行機など趣味多数。私設「青梅勝沼天文台」運用。
青梅勝沼天文台HP http://sky.geocities.jp/oumeastro/astrotop